十二周年記念企画・闇鍋if

Barak Island Fight!!

終章.満場一致でどっとはらい

「お帰りなさい、デヴィットさん。無事コードKが真人の元へ戻ってきましたよ!」
目を覚まして、一番最初に見えたのはシンの嬉しそうな笑顔だった。
「ちぇっ、Kのヌードを見損ねちまったじゃないか。それもこれも、君達のせいだ」
ひとまずシンへ八つ当たりしておくと、デヴィットは身を起こす。
ダグーもキースもエイジも、いない。また亜空間とやらに飛ばされてきたのか。
「えっ?あ、あの、ヌードって……?それに俺達のせいって」
困惑するシンへ振り向くと、デヴィットは肩をすくめてみせた。
「いつまで終わった話をしているんだい。とにかく、これで僕はお役御免なんだろ?さっさと僕の住んでいた世界に戻してくれないかな」
「は、はい。あぁ、それと」
言いかけるシンを制し、デヴィットが言う。
「異世界で起きた記憶は消去される……違うかい?」
「あ、いえ、違いません。そうです、そう言おうと思っていました、今」
「やっぱりね」
悪魔に恋した同僚の話も、向こうに戻ったら忘れてしまうというわけか。
残念だ。せっかく皆に言いふらしてやろうと思っていたのに。
「それじゃ……そろそろヨンダルニアへの次元を開きますね」
「うん」と頷いて、デヴィットはシンをしげしげと眺める。
会ったばかりの頃は眺める余裕もなかったが、今こうしてじっくり眺めてみると、なかなか良い体つきをしている。
リュウがスマートなのに比べ、シンは体育会系とでも言うべきか。
からみつく視線に気づいたか、シンが「あの、何か?」と怪訝に尋ねてきたので、デヴィットは陽気に答えてやった。
「君、スポーツでもやっているのかい?良い体をしているね」
「え、まぁ。昔はサーフィンやっていました」
「そうか……道理で良い尻をしていると思ったよ」
「えっ?シリ?」
「うんうん、まぁいいよ」と一人で納得しているデヴィットに、シンは訳がわからないといった顔を見せていたが、やがて仕切り直した。
「あの、次元の扉を開きましたので、こちらから飛び込んで下さい」
促されるままに、デヴィットは次元の扉の前に立つ。
そこには扉と呼ぶには不安定な、真っ暗な穴が口を開けて待っていた。
片足を突っ込んで、ふとデヴィットが振り返る。
「また、会えるかな?」
「へ?誰に、ですか?」
シンはキョトンとしている。全く空気の読めない案内人だ。
誰にって決まっているじゃないか。
デヴィットの脳裏に情けない下がり眉の、だが、どこか構ってやりたくなる男の顔が浮かんだ。
「……いや、なんでもない。じゃあな、シンくん。達者でやれよ」
緩く首を振ってダグーの肖像をかき消すと、暗い穴の中へ飛び込んだ。
「あ、はい。デヴィットさんも、お元気で!真人も感謝していましたよ〜!」
背中を追いかけてシンの声が聞こえたような気もしたが、落ちる感覚と共に意識も薄れてゆき、自分の部屋に到着した頃には、異世界で起きた全ての出来事が記憶から失われていたデヴィットであった。

Fine.

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