13周年記念企画:BAD DREAM

颯斗編

第二話 真夜中の攻防

次に目覚めた場所は、真っ暗な夜空が広がっていた。
俺は道路の真ん中で大の字に横たわり、星空を眺めていたのだった。
やがて足音が近づいてきたかと思うと、俺を覗き込んでくる顔がある。
「……何これ……死体?」
いや、顔じゃない。
正確にはチンチンブラブラだ。
目の前で振り子のようにぶら下がるそいつを、俺は邪険に払いのけて立ち上がる。
「なんだ、お前は。わいせつ物陳列罪で捕まっても知らないぞ?」
「おっ……おごぉぉぉぉ……っ」
俺にチンコを思いっきり手で払われ、そいつは蹲って呻いている。
少々可哀想な真似をしてしまったかもしれない。
だが、いきなりバッチィもんを他人の顔面に突きつけてくるほうが悪い。
見せてもいいのは女の子だけ、それも可愛い女の子の陰部だけだ。
「ちょっと、何してんのよ樽斗ー。遅いから捕まったかと心配――」
タッタッタッと軽い足音が近づいてきて、高いキーが話しかけてくる。
相手が気づくのと同時に俺も、そちらを振り返って唖然となった。
近づいてきたのは目元のぱっちりした可愛い女の子だが、何も履いていない。
先ほど俺を覗き込んできたチンコ野郎同様、下に何も履いていないのだ。
こいつは珍しい。
女のストリートキングとは。
俺を見た途端、「やばい、警察!?」と叫んで、女の子が身を翻す。
一応警察に捕まったらヤバイという自覚は、あるらしい。
「まてまて、ハニーちゃ〜ん」
俺は後を追いかけてみることにした。
上手く捕まえれば、あんなことやこんなことも……グヘヘヘ。

入り組んだ街を追いかけ回すうちに、彼女の背中を見失う。
くそ、意外と足が速いな。
それに今になって気づいたが、ここは一体何処なんだ?
小さな街にいたはずなのに、いつの間にか大きな街へ移動していた。
サーカスのテントは、何処にもない。
あるのは煉瓦造りの家ばかりだ。
そいつがずらっと立ち並ぶ街並みは、どこかヨーロッパを思い起こさせる。
ま、実際に行ったことはないんだけどな。ヨーロッパ。
今は真夜中、表通りを歩く人影は一つもない。
いるのは俺ぐらいなもんだ。
いや、あとはチンチンブラブラ野郎と、さっきの丸出し少女もか?
大体、あの二人は何なんだ。なんで下を履いていないんだ。
二人でエッチしていた――にしても、終わったんならパンツぐらい履けっての。
全く、風紀の乱れた街だぜ。
なんて溜息をついていると、軽い足音が背後から迫ってきた。
「――!」
俺に追いつく前に足音が急停止したので、そっと振り返ってみる。
あぁ、やっぱり。さっきの連中の仲間だ。
だって下を履いていない。
先ほど殴った奴よりも遥かに小柄な少年が、俺をじっと凝視していやがる。
チンチン丸出しでも全然恥ずかしがる様子がない。
そういう街なのか?
下は履かないのが主流なんだろうか、この街の。
「おい、お前」「お前……警察じゃないな?」
俺と少年の声が重なる。
「いや、俺は警官じゃない」「何者だ」
また重なった。
「何者って……名前は颯斗だけど」「颯斗?」
またかよ。まずは俺の話を聞いた上で、聞き返せって。
せっかちな小僧め。
「まぁね。そういう君こそ何者」「樽斗の兄弟か?」
いい加減にしろ。
「俺は旅行者だ」
胸を張って答えると、少年はしばし思案していた。
よし、油断している今なら捕まえられるかもしれない。
さりげなさを装いながら、俺は一歩、二歩と彼に近づいた。
「ここへは来たばかりでね。旅館があるなら教えてくれないか?」
「…………」
黒い瞳が俺を凝視するだけで、返事はない。
「頼むよ」
手を伸ばせば届く範囲まで近づいたところで、俺は行動に出た。
野獣の如き勢いで、とまではいかないが猛烈な体当たりで少年を押し倒す。
「うわっ、何を」と驚く少年をうつぶせの状態で押さえつけ、俺は尋ねた。
「さっき、お前と同じ丸出しな格好で女の子が走っていったんだ。その子がどこへ行ったか知らないか?俺は、その子に用があるんだ」
途端に、俺の腕の中にいる少年が身を固くする。
「風花に何の用だ」
ほぅ、風花ちゃんというのか。愛らしい名前だ。
「もちろん決まっているだろ?セックスするのさ」
「せ、くす……?」
きょとんとしている。セックスを知らないお年頃だったか。
あえて説明はせず、さらに彼女の居場所を追及した。
「風花ちゃんのおうちは何処だ?お前、知り合いだろう」
「お前には教えない」
強情な奴め。
すぐ後悔することになるぞ。
俺は奴の白い尻をナデナデしまくった。
男の尻を撫でるなど、本来なら虫酸が走るほど気持ちの悪い行為である。
だが、この少年は下についている物さえ意識しなければ、女の子にも見える顔をしていた。
長い睫毛といい真っ黒で大きな瞳といい、女装したら、きっと栄えるに違いない。
そうだ、チンチンブラブラなどついていないと考えれば、こいつは立派に女の子だ。
ぶらさがる物だって、後ろから見る分には見えないし。
それに、こいつの尻。
女の子みたいにすべすべしていて触り心地がいい。
「や、やだ……っ」と呟く声も高くて、女の子みたいだ。
両目をかたくつぶり、ぶるぶると震える姿なんざ、今からレイプされそうになって怯えている女の子そのものだ。
よし、決定。お前は今から女の子。
「さぁ早く、風花ちゃんのおうちを教えろ。じゃないとお前の尻へぶち込むぞ」
「ぶ、ぶちこむって……何を」
「何って言ったらナニに決まってんだろ?アァンッ?」
調子に乗って尻の割れ目へ指を突っ込むと、少年がびくんっと弓なりに体を反らせる。
うわぁ、なんだこれ。可愛いじゃん。
男じゃなかったら、速効突っ込んでいるところだぞ。俺の熱いマグナムを!
「ちょっと!誉ちゃんに何してんのよ、そこの変態ッ」
俺がいきり立つのと、俺の後頭部に堅い物がぶつかったのは、ほぼ同時で。
叫び声すらあげられず、俺は痛みにのたうち回った。
「誉ちゃんを押し倒していいのは、あたしだけなんだからね!勘違いしないでよねッ」
甲高い罵声を聞きながら、俺は後頭部を押さえて蹲った。
オォォォ、痛ぇ。何しやがんだ、コノヤロウ。
何かをぶつけられた箇所が恐ろしいぐらいズキズキ痛む。
少しでも気を緩めたら、涙が出そうだ。
軽い足音が近づいてくる。が、俺は立ち上がる事も出来ずに這い蹲るしかない。
最初に素足、生太ももと順に見上げていって、桃色の痴毛と三角のお股を見た。
あれ、これは……?
「誉ちゃん、大丈夫?卑猥な真似されなかった?」
俺の体を足でごろんとけっ飛ばし、女の子が少年を抱き起こす。
そうだ、さっきの女の子だ。桃色の痴毛には見覚えがあった。
「う、う……風花、龍輔は?それに樽斗も」と少年が小さく囁いて、風花ちゃんは眉間に皺を浮かべながら答える。
「龍輔ぇ?知らない、どっかでサボッてんじゃないの。樽斗なら、さっき道で股間を押さえて蹲っているのを見かけたけど」
樽斗ってのは、俺が先ほど仕留めたチンチンブラブラ野郎か。
風花ちゃんは俺に背を向け、完全に油断している。
これなら……これなら、やれるっ。
俺はじりじりと躙り寄り、両手を組み合わせて人差し指を立てると、一気に突き入れた!
どこって、風花ちゃんのお尻の穴に。
「ぎゃぴぃっ!?」と叫んで、風花ちゃんが文字通り飛び上がる。
どうだ、思い知ったか。後頭部のお返しだ。
いくら可愛い子の仕打ちといっても、限度があるぜ。
倍返しにしてやる。
俺は突き入れた指を、ぐりぐりと奥へ進ませてやる。
「あ、ぎ、や、やめてよ、このヘンッ……タイ……ッ!」
身をよじらせて俺の指を引き抜こうとしてくるが、いかんせん体勢が悪い。
くちゅくちゅと中の肉を突いただけで、彼女は糸の切れたマリオネットになった。
「や、うっ……だ、だめぇっ、そこは、誉ちゃんだけがしていい場所なのぉっ」
知るか、そんなの。
俺に攻撃した報いを、たっぷり受けるがよい。
指の動きを激しくすると、風花ちゃんは俺の腕を掴むのも忘れて身を丸くする。
完全無防備なお尻が、俺の目の前に差し出された。
指を入れたまま、白いお尻に舌も這わせる。
べろんべろんと俺の舌が舐め回すたびに、風花ちゃんはビクビクと体を震わせた。
「や、やぁ、だめ、だめぇ」
「ゲッヘッヘッ。浣腸で感じるとは、いやらしい女の子だね風花ちゃん」
「ち、違うの、違うのぉ……」
違うと言いつつ、口からは涎が垂れている。
嫌がりながらも感じているんじゃないか。
「誉ちゃん、しっかり見ていろよ?これから大人のセックスを見せてやるぜ」
誉ちゃんこと先ほどの美麗少年は、ポカンとした表情で俺達を見ている。
いや、正確には悶える風花ちゃんを唖然と眺めているのだった。
きっと風花ちゃんが悶えるさまを、今まで一度も見たことがないんだろう。
どうだ。君の知る風花ちゃんは、こんないやらしい女の子だったんだぜ。
「誉ちゃんの見ている前で、イカせてやるよ」
風花ちゃんの耳元で囁くと、彼女の両目に涙が浮かぶ。
「や、やだ……やめて、お願い……さっきのは謝るから」
駄目だな。誠意が足りない。全っ然足りない。
俺は手を伸ばし、彼女の着ている薄いシャツを上に引っ張り上げた。
「あっ!」と叫んで胸を隠そうとするのへは、お尻をぐちゅぐちゅかき回して妨害した。
「やぁ、やぁっ、だめ、だれか、誉ちゃん、たすけてぇ」
息も絶え絶えな彼女を抱き起こし、可愛いお尻に俺のいきり立った物を押し当てる。
「どうだい、ビッグなシロモノだろう?」
「やだぁ、怖いっ!助けて、誰かぁっ」
風花ちゃんは半狂乱だ。
涙が頬をつたって落ち、鼻水まで垂らしている。
クックックッ、いいザマだ。
だが、こんなもんじゃ許してやれん。
そう、最後までイかないと許すわけには、いかんなぁ〜?
俺はさながら悪代官の心境で、自慢のマグナムに手をかける。
「君が悪いんだよ。そんな格好で俺を誘惑したりするから」
もう一度耳元で囁くと、俺は風花ちゃんを押し倒し、馬乗りになった。
可愛いお尻を指でこじ開け穴の奥へ突き入れようとするのと、俺の股ぐらを、ものすごい勢いで誰かの足が蹴り上げたのは、どっちが先だったか。


――言うまでもない。蹴られたのが先だった。
「ぐ、ぐぉぉぉ……」
薄れゆく意識の中、俺はぼんやりと男の怒号を聞いた。
「この野郎、俺の風花に何してやがんだ!!」ってのと「風花、大丈夫か!」ってのだ。
誉ちゃんではない。もっと低い、成人男性の声だ。
くそっ。まだ仲間がいたとは、不覚だった……ぜ…………

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