15周年記念企画・闇鍋if

アミダでテーマ・リレー小説

第三話 キャラ作りは大変だニャン(ΦωΦ)

~あらすじ~
キャラの立った坂井に憧れるクロード。
俺もあんたみたいに尖った個性が欲しい!と申し出る彼に、坂井が提案した「キャラ」とは――?


坂井は言った。
「キャラを立たせるのに一番簡単な方法は、語尾を変えるこった」
「語尾を?」
クロード以下、級友がハモる。
「そうだ。たとえば、語尾に"ござる"とつけるだけでも、だいぶキャラが違ってみえるでござる」
字面だけだと、チョンマゲの台詞みたいだ。
実際にはヤンキー顔負けの三白眼デコスケが言った言葉でも。
おぉーっと背後で歓声があがる中、クロードも真似してやってみた。
「こ、こうでござるか?」
「そうでござる。なかなか様になってんじゃねぇかでござる」
「お褒めいただき感謝でござる」
――と、その時。
「ござるござると、うるさいでござる!」
いきなりバーン!と扉を開けて、入ってきたのは三年生の笹川だ。
「ござるなんて、ありきたりすぎてキャラ立ちにもなんねーでござるよ!」
しっかり自分も、ござるを採用している。
だが確かに、三人もござる使いがいたのでは、キャラ立ちもクソもない。
「もっと変わった語尾がいいかもな」と坂井にも言われ、クロードはない知恵絞って考えた。
「じゃ、じゃあ……ニャンなんて、どうかな?」
一斉に、ざざーっと級友が後ずさる。
「にゃ、にゃんっ!?」
「そう、にゃん」
「にゃんねぇ。やってみろよ」
坂井に促され、クロードはコホンと咳払いすると、おもむろに言った。
「こんにちは、クロードだにゃん。今日はいい天気だにゃん」
恐らくは、その場にいた全ての級友が思ったに違いない。
顔は普通なのに語尾がニャンというだけで、途端に気持ち悪く感じるのは何故だろう――!
「坂井にゃん、どうだにゃん?俺の個性、立ってきたにゃん?」
ずいずい真顔で迫られ、ドン引きしていた坂井も引け腰だ。
「あ、あぁ……いいんじゃねぇか?」
「にゃあぁぁん、嬉しいにゃん♪坂井にゃんに褒められたにゃんっ」
坂井に何度も頬ずりした挙句、拳を握ってふるふるポーズのおまけつき。
クロード、お前は一体どこへ行くつもりなの?
「それじゃ、校内一周して反応を確かめてくるにゃん」
「えぇっ!?」「ちょ、ちょっと待て。校内って、お前」
級友達が慌てて引き留めるも、クロードはニャンニャン言いながら教室を出て行ってしまった。
二時間目開始のチャイムが鳴り響く中。

「よし、授業始めるぞ」
二時間目は数学だった。
担当の教師、長田は教室を見渡して、生徒の様子がおかしいことに気づく。
「どうした?皆、脂汗なんか流して」
「せ、先生……」
覇気のない目が長田を見つめる。
皆、ニャンニャン毒気に当てられてしまったのだ。
「先生、ちょっといいですか?」
手を挙げた生徒、葵野に「なんだ」と答える長田。葵野は間髪入れずに言った。
「先生、ちょっと語尾にニャンってつけてみてください」
「えっ?」
ヘンテコリクエストに長田の片眉が上がりかけるも、続けて須藤の「お願いします!俺も聞きたいですっ」が耳に届くと、コホンと咳払い。
「よし、他ならぬ生徒の頼みだ。やってやろう」
チラッチラッと須藤に色目を送りながら、長田は「あー……」しばらく躊躇っていたが、意を決してリクエストに応えた。
「今日は一日目なので教科書を、ざっと読むだけにするにゃん?」
かぁっと赤面しながらニャン語尾をつける長田を見て、須藤他、一部の生徒は思った。
か、可愛い――!
「せ、先生!もう一度お願いしますっ」
興奮してガターンと机を蹴り飛ばす者や、鼻息荒く前屈みになる者で、教室は騒然としてきた。
そんな中、坂井はぼんやり考える。
――クロードのキャラ、あっという間に長田にパクられちまったなぁ……


その頃、クロードは何も知らんとニャンニャン言いながら廊下を歩いていた。
誰かに披露したくてたまらないのだが、何故か廊下は無人だ。
いや何故かも何も、今は授業中だから誰もいなくて当たり前なのだが。
「誰かに聞かせたいのに誰もいないにゃん。寂しいにゃん」
ポツリと呟き、踵を返した時だった。
『待つニャ!』と甲高い声に呼び止められたのは。
振り向くと、黒服の少女が仁王立ちで怒りに燃えている。
『お前はなんニャ!? パーシェルの真似っ子ニャ?』
両耳に鈴をつけており、彼女が何か話すたびに、りん、りんと鈴がなった。
「パーシェルって誰だにゃん?」
『お前の目の前にいるニャ!』
あぁ、なるほど。つまり、一人称が名前の女の子か。
「よくある個性だにゃん。没個性乙だにゃん」
ふふんと鼻で笑い飛ばすクロードに、パーシェルの怒りは、ますますヒートアップ。
『お前だってパーシェルのパクリなのニャ!』
「違うにゃん。俺のは"ん"が最後につくから別物にゃん」
廊下でニャンニャン騒いでいると、近くの教室のドアが勢いよく開く。
「静かにしろ、授業中だ」
開いた勢いとは裏腹に、抑揚のない静かな音量で注意された。
「あ、先生、こんにちはにゃん。俺は今日から、にゃん語で話すことにしましたにゃん。お見知りおきを、にゃ~ん」
「どうでもいい。早く教室へ戻れ」
教師は全くクロードの話に耳を貸してくれず、パーシェル共々クロードは追い立てられた。
しかし、あの教師。クロードがニャンニャン言っても眉毛一つ動かさなかった。なかなか豪の者である。
「世の中にはツワモノがたくさんいるんだにゃん」
『しつこいニャ!いつまでパーシェルの真似するのニャ!?』
「だから、俺のはニャンで、お前のはニャだろにゃん?違う語尾なんだよにゃん」
聞き分けの悪い猫娘に何度説明しても、パーシェルには理解してもらえない。
しまいには『偽物は退治するニャ!』と襲いかかられ、「ひょえ~にゃん!」クロードは廊下を疾走するはめに。
遠ざかっていく二つのニャンニャンを見送りながら、廊下へ出た教師、ブルー=クレイは溜息をついた。
――変な奴しかいないのか、この学校は。
実は内心しっかり動揺していたクレイである。ただ、表情には出さなかったというだけで。
しかし、変な奴だらけの学校だと悲観してばかりもいられない。
もうすぐ学園祭があるのだ。その時には、外賓もたくさんくる。
粗相のないよう、今から生徒達をしつけておかなくては。クレイは一人、教育魂を燃やすのであった。