たんぽぽ

ふと思い立ち、電車に乗って近くまでやってきたんだ。

君との思い出は、もうとっくに捨てたつもりだったのにね。

坂を登って、あの丘に来たんだ。

あの日と同じように、一面にたんぽぽが咲き誇っていたよ。



君は、覚えているかい?

二人して、たんぽぽに埋もれるように座り込みながら、いろんなことを話したね。

卒業後のこと。

就職先のこと。

そして、二人のこれからのこと――

まるで遠い昔の出来事のようだけど、たった半年前のことだったよね。



ああ。

君のことを思いだしたら、何だか泣けてきたよ。

不思議だね。

あれだけ喧嘩して、大泣きして、お互いに怒り狂って別れたはずなのに。

この手が震えているんだ。

君を、もう一度抱きしめたいと。



だから、僕は今、丘の上にやってきた。

ほら、こうしてシャベルも持ってきてね。

君の顔がもう一度見たい。

君の体を、抱きしめたい。



だから、僕は今、君の死体を掘り出している。

好きだよ、奈美子。

もう二度と君を離したりするもんか―――



-おしまい-