FES

公女誘拐事件

3.真相

岸へ戻ってきたカイルを待っていたのはレナであった。
待っていたのは彼女だけではない。ジェイドと刹那も合流している。
「冒険者ギルドの協力により、港を取り戻す事ができました。私たちは今から公の元へ参ります」
賊をギルド員に引き渡しがてら、カイルも「判りました」と頷き、しかしと続けた。
「公爵の元へ行かれるというからには決定的証拠が出てきたのですか?」
「いいえ、それはまだ」と答えるレナの横で、ジェイドが鼻息を荒くする。
「いいじゃねェ!言っただろ、誰もいねェ商会で襲ってきた連中はラグナル公の手下だって!」
「手下じゃないわ……雇われ傭兵よ」と小声で訂正する刹那を無視して、なおも大声で掴んだ情報を伝えた。
「あいつら、ミーナも殺す気だったんだ!そんな奴らを野放しに」
「物的証拠がないと罪を問いただすのは難しいです」
ジェイドを制し、カイルは港を見渡す。
倉庫が立ち並ぶ中、ギルド員が何をしているのかと言えば、倉庫の立ち入り調査だ。
商会とも公爵とも連絡が取れなかったため、やむなく強制捜査を強行したのだとはレナの弁。
商会の会長は賊に誘拐されたとしても、公爵と連絡が取れないのはおかしい。
そうしたわけで、今から公の元へ向かうつもりだったのだ。
「状況は把握できました。ですが、ギルドは倉庫に何が隠されていると予想しているのですか?」
「この騒動の原因となりそうなものです」と、レナ。
「一連の事件が商会と公爵とで利益で張り合った結果だとしても、やり方が強引すぎます。どちらかの仕業ではなく、第三の敵がいるのではないかと冒険者ギルドは考えているようですね」
「なら……僕達も捜索に加わりましょう。レナさん、あなたの聖騎士ならではの判断をお貸しください」
踵を返したカイルをレナの声が追いかける。
「何を探すおつもりなのですか」
「商会と公爵はラグナルの商売を牛耳っています。仮に第三の敵がいたとして、この二つを狙うとしたら何が目的だと思いますか?」
カイルに問われ、レナは少し考えたあと、あっとなった。
「……密輸品ですか!?」
カイルは頷き、自身の推測を告げる。
「或いは、非合法な商品かもしれません。レナさん、あなたであれば、そうした物にも見覚えがありますよね」
「判りました。手伝います」
レナも踵を返して倉庫へ向かうのへは、ジェイドが声を張り上げる。
「え?公の元へいってブン殴るんじゃなかったのかよ!」
「ブン殴りはしません」と答えた上で、レナが溜息と共に血気盛んな僧兵を窘めた。
「あなたは少し、人の話を訊く修行をしなさい。そのほうがゼファー神もお喜びになりますよ」
「おう!」と判っているんだかいないんだか満面の笑みを浮かべるジェイドに、もう一度ため息をつくと。
レナは改めてカイルを追いかけて倉庫へ向かい、刹那とジェイドも後に続いた。

一行がギルド員の調べていない倉庫を見つけたのは、少しばかり外れた場所にある一つだった。
扉の上には何かの文字が書かれていたようなプレートがついていたが、掠れてしまって読みとれない。
「この倉庫だけ、なんでポツンとしてんだ?左右隣にも建てりゃ~いいのに」とはジェイドの文句だが、そんなのはカイルやレナの知ったことではない。
戸を引っ張ると、カビ臭い匂いが鼻を突く。
そのカビ臭い中に違う匂いを見つけて、刹那はクンクンと鼻をひくつかせた。
「……どうしました?」とレナに問われ、少女が首を傾げる。
「妙な……匂いが、するわ……」
「妙な匂い?」
怪訝なカイルの横をすり抜け、ジェイドが肺いっぱいに息を吸い込んだ。
そして、刹那のほうを振り返って一言。
「変な匂いなんてしねェぞ」
突っ込む気力もなくしたカイルは黙って彼の横を通り、一面に積まれた袋を調べる。
「袋だらけですね」とレナが驚くのも無理はない。
倉庫内に木箱は一つもなく、あるのは大量の大きな袋だ。
袋は全て一定の大きさに膨らんでいる。
「この匂い……毒に、似ている……」
またも刹那がポツリと呟き、レナとジェイドが一斉にハモる。
「毒!?どういうことですか、刹那」「毒だって!?マジか!」
しかも「でやぁッ!」と、いきなりカイルが袋を手刀で袋をぶった切るもんだから、二度驚かされた。
「な!何をやっているんですか、人の荷物なのに!」
「え?ですが、毒が詰まっているのでしたら調べないといけません」と答えるカイルの周辺は、白い煙でぼやけている。
袋いっぱいに詰まっていたのは粉末だったのか。
刹那が口と鼻を押さえて、レナの注意を引く。
「……レナ、煙を吸い込まないで」
「え?は、はい」
訳が分からず、しかし刹那の視線にも逆らえず、レナも口と鼻を押さえる。
煙の近くを離れた皆が遠目に見守る中、カイルは袋の中身を調べて「……やはり」と呟いた。
「この袋の中身はユスフ草や、びろびろ草のようです。粉末化して形状を変え、誤魔化しているようですが。この二つは販売を禁止されている草です。この草の成分を吸収すると軽い幻覚や興奮を味わえるのですが多量に接種すると死にも関わってくるという……一種の毒草ですね」
「へぇー、オマエ詳しいな!」と褒めるジェイドへ「以前、任務で毒草を所持する組織を壊滅させたことがあったんです」と頷き、カイルは袋の表面へ目を落とす。
袋には何も書かれていなかった。
「これが商会のものか公のものかは、まだ どちらとも言えません。もう少し手がかりになりそうな物がないか、調べてみますか?」
カイルに尋ねられて、レナは更に一歩下がってから頷いた。
「えぇ。その毒草に関する何かの手がかりがあるかもしれません」
白い煙がカイルを中心に充満するのを、嫌悪の表情で眺める。
一つを無造作に選んで、この結果だ。全ての袋の中身が毒草である可能性は高い。
こんなものを倉庫に積んでおく神経も信じられない。
ラグナルはレナが恐れていた以上に、腐敗化していたようだ。
「なぁ、これって食えねぇのか?それか、煮詰めたら薬になったりしねェのか?」
ジェイドの問いに首を振り、カイルが答える。
「えぇ、残念ですが。大昔は怪我の治療をする際に麻酔として利用したんですが、副作用のほうが強すぎて、すぐに使われなくなったようです」
「なんだ、ホントに毒の効果しかないのかよ、こんないっぱいあるってのに」
ぶぅと口を尖らせて不満なジェイドを捨て置き、刹那とレナは倉庫の壁を丹念に調べている。
「薬にもならねぇのに、なんでこんな大量に仕入れたんだ?」
なおもジェイドに雑談をふられて、ジェイドは根気よく繰り返す。
「いくらでもありますよ、使い道なんて。例えば、これを仕入れたのが商会ならび公爵の仕業だと吹聴したり、直接公爵や会長に使うという手もあります」
「怖ェこと言ってんじゃねーよ!オマエ、まさか、この毒で公爵を殺しにいくつもりなのか!?」
あらぬ冤罪をかけられてもカイルは慌てたりせず、まっすぐジェイドを見つめる。
「考えられる策の一つです。これを街中にばら撒いて貿易都市を混沌に陥れることだって……悪党は僕達の考えつかぬ真似をするんです、あなたも覚えておいてください」
「お、おう。判った!」
ジェイドの返事に対し、カイルは頷く代わりに額に手をやった。
「あぁ……目の前が白い……すみません、少し、休ませていただきま・・・す・・・・」
ばたり。
不意に、隣の男が前のめりに倒れ込んだ。
「……え?はっ!?お、おい、カイル!どうしたんだ!!」
慌てて駆け寄ってみたら、カイルは床に突っ伏したまま何かを呟いている。
「うふふふふ・・・・チョウチョたんが見えるヨー・・・」
煙を大量に吸い込んでしまったようだ。目が死んだマグロのように濁っていた。
「しっかりしろ!蝶なんか何処にも飛んでねェぞ!」
その声に振り返ったレナと刹那も事態を知るはめに。
「ずっと……煙の近くにいるから……」
いわんこっちゃないとばかりに何度も首を振る刹那をその場に、レナは走り寄るとカイルを抱きかかえ起こす。
「しっかりなさい!一旦外へ出ましょうッ」
ジェイドがカイルを担ぎ、刹那を倉庫に残して外へ飛び出す。
「水、水はありませんか?」との催促には「海水でいいだろ!」と叫び返して、水筒で水を汲む。
半ば白目をむいた顔面にぶっかけてやると、二、三度咳き込みながら、カイルは起き上がった。
「げほっ、何をなさるんですか、ジェイドさん」
「オマエがチョウチョさんと追いかけっこすっからだろ!」
「……は?」
ぽかんとなるカイルに重ねてレナが言う。
「あなたは毒草の粉を吸い込んでしまったんです。正気を失う前に助けられて良かったですが、次からは軽率な真似をしないよう心がけてください」
「あ……すみません」と素直に謝るカイルへは、レナも僅かばかりに微笑んだ。
外で微笑ましくも騒がしい人命救助が行われている間――
刹那は一人倉庫に残って、隅々まで調べていた。
「見て……」と、戻ってきた面々に調査の結果を示す。
「これは……抜け道?」
カイルが首をひねるのも尤もで、倉庫の床下に地下へ続く通路を作る意味がわからない。
「どこへ続いているのでしょう」と呟いたレナの前の前で「行ってみよう!」とジェイドが階段を降りてゆく。
「ちょ、ちょっとお待ち下さい、ジェイドさん!この麻薬は、どうするんです」との問いにも、返ってくるのは「オマエに任せた!」といった声だけだ。
泡を食う二人の騎士を捨て置き、刹那も階段を降りた。
「レナとカイルは麻薬をギルド員に渡して……わたしは、ジェイドを追いかける」
どこへ出るのかも判らない地下通路を二人だけで行かせるなど、騎士道の許すところではない。
レナは間髪入れず叫び返した。
「待ちなさい、刹那!私もいきます、カイルは直ちに麻薬をギルド員に引き渡し後、追ってくるように!」
「は、はい!」
頭上で慌ただしく走り去る足音を聴きながら、レナは刹那と共に地下道をひた走る。
一本の迷い道すらない長い通路の先に一条の光を見つけ、階段を駆け上がった。
「――ここは!?」
一面に開けるのは緑に囲まれた庭園。
そして中央に佇む柔らかな色彩の建物こそは、ラグナル公爵の住まうラグナル宮廷ではないか。
麻薬のあった倉庫の地下に宮廷への近道が掘られていたとなると、あの倉庫の持ち主か誰なのかも明白である。
「いきましょう、公の元へ」と言ってからレナは気づいたのだが、ジェイドの姿が何処にも見当たらない。
やがて聴こえてきたのは喧騒。嫌な予感しかしない。
果たして駆けつけた二人が見たのは、顎を押さえて蹲る門兵であった。
「しっかりしてください!何があったのですか」と尋ねるレナに門兵が言うには、通過証明書も持たずに此処を通せと言い張る不審人物に顎をしたたか殴られて強行突破されたとのこと。
誰がやったのかなんて考えるまでもない。
「あの単細胞……!」と悪態をつくレナを「急げば……間に合うかもしれないわ」と促し、刹那が入口へ飛び込む。
「あなたは、ここで休んでおいでなさい。賊は私たちが捕まえてみせます!」
レナも門兵へ約束し、顎を押さえた格好での「ま、待て……!」との制止を振り切って屋敷へ駆け込んだ。

だが。
屋敷に入って直後、刹那は間一髪で凶刃を逃れる。
天井から飛び降りてきた人影がナイフを閃かせて、襲ってきたのだ。
下卑た笑いを顔面に張りつけて「行かせるかよ!」と叫ぶ姿は、どう頑張って見ても警備員の風体ではない。
盗賊か強盗、そういった類であろう。
何故このような輩が入口付近で待ち構えていたのか。答えは奥にいる公が知っていそうだ。
「……邪魔よ」
すっと刹那の姿が消える。
「何ッ!?」と叫んだ直後、男の身体は床に激しく叩きつけられた。
その間に彼女を追い抜いたレナの頭上へ尖ったものが降り注ぐのは、剣で一閃する。
「このような罠!」
尋常ではない出迎えに、レナの嫌な予感は増すばかりだ。
ラグナル商会が賊の手により店中空っぽにされる惨事だったのだから、此処も何者かに襲われた可能性は非常に高い。
何者かに襲われ――そして、占領された。
これらの待ち伏せは、断じて本来の公の意図ではあるまい。
続いて後方でキラリと光った何かを、本能でかわす。
吹き矢を構えた男の姿を横目に見たのを最後に、横手の扉が突如開いてレナの顔面を強打した。
「~~~ッ!」
これにはたまらず、顔を押さえて蹲る。
彼女の頭上に「あ、悪ィ!」と非常に聞き慣れたジェイドの声が降り注ぎ、すぐに走り去っていく。
「ま、待ちなさい、ジェイド……待て!」とレナが怒鳴っても梨の礫、戻ってくる気配はない。
さらには刹那までもが「先に行くわ……」と横を駆け抜けていき、鼻の痛みが収まらないレナも立ち上がる。
どうにも想定外の出来事ばかり起きて上手くいかない事件だが、ことの真相は、きっちり掴んでおきたい。
先に行った二人が全員を叩きのめす前に、真実を吐かせておかねば。
レナがジェイドと刹那の両方に追いついたのは、この二人の性格を考えれば奇跡と言ってもいいかもしれない。 二人とも奥の部屋の前で待っていたのだから。
無謀に飛び込まなかった点に安堵すると同時に、レナの脳裏には疑問も湧き上がる。
彼女の疑問へ答えるかのように、刹那がポツリと呟いた。
「ここで待っていれば追手がくるかもしれない……全員叩き伏せたほうが、あとで来るカイルも早く合流できる……違う?」
レナを待っていたわけではなさそうだ。
話している側から、早くも廊下を走ってくるのは凶悪な顔つきの面々だ。
「そうですね、証人は多ければ多いほどいい。ですが!」
レナは振り向き、扉が開いたタイミングで剣を振るう。
「ぎゃぱッ!」と叫んでナイフを持ったまま倒れ込む覆面男を乗り越え、部屋に踏み入った。
「待ち伏せなど笑止千万!まとめて斬り伏せてあげましょうッ」
部屋にいたのは、どいつも覆面で顔を隠した怪しい軍団だ。
「侵入者を倒せ!殺しても構わん!!」
その背後にいるのは、きらびやかな生地仕立ての服を着込み、でっぷりと太った腹。
ラグナル公爵の肖像画と同じ顔が、見るも顕に狼狽えて殺せと喚いている。
「ラグナル公!これは、どういうことですかッ。説明を求めます」
襲い来る覆面を片っ端から切り払ってレナが怒鳴っても、公は全く聞く耳持たずだ。
殺せと喚くばかりで話も出来ない。
「話をするに相応しい状況にしてあげましょう!」と廊下からも怒鳴り声、これはカイルか。
乱闘は部屋の外でも内にも響き渡り、状況劣勢と見て「あ、わわ」と逃げ腰なデブオヤジの首根っこは刹那が押さえつける。
窓を乗り越えて逃げようとする覆面もジェイドに捕まり、床に転がった。
――やがて襲いかかる者が一人もいなくなり、拘束を解かれた公らしき肥満体がべそべそと供述を始める。
「わ、儂は、儂は公爵ではないんじゃ……もう許してくれぇ」
「公爵ではない?では、誰だと言うんです」
レナの問いに、公爵だった男は涙と鼻水でグチャグチャな顔をあげ、正体を明かした。
「儂はラグナル盗賊団に雇われた、しがない冒険者なんじゃ……本当の名はジャジャ=マルハメッドという」
偽物公ジャジャの話によると、ラグナル盗賊団とは貿易都市界隈に巣食う盗賊が結成した巨大組織だという。
彼らはラグナ地方で麻薬を売りさばきたいが為に、まずは商会の者になりすまして公爵へ近づいた。
麻薬を新商品の薬と偽り、徐々に薬漬けにしていった後は、何食わぬ顔で本物と偽物をすり替えた。
屋敷を乗っ取った後は、港、それから商会も乗っ取る算段であった。
ラグナルで商売をするには、商会の商業権が邪魔だったのだ。
ミーナが何度も誘拐されそうになったのは、会長の身内だからだ。
誘拐して、殺す為に傭兵まで雇った。
商会を潰す手っ取り早い方法として、盗賊団は一番最悪な手段に及んだ。
誘き出した店員、及び警備員は全て殺されて魚の餌になった。
「本物の公はどうしたというのです。まさか、殺したとでも?」
レナに問い詰められて、ジャジャは項垂れる。
ややあって、ポツポツと答えた。
「いや、死んではおらん。だが、あの男は一生麻薬漬けの人生を送るだろう」
考えようによっては、死ぬよりも酷い仕打ちだ。
無表情に刹那が宣告する。
「神にかわって…………この男を裁いても、いい?」
ジャジャの顔色が変わった。
「ま、待ってくれ!公を薬漬けにしたのは儂じゃない!奴らだ、盗賊団が嫌がる公に無理矢理 薬を嗅がせて!」
言い訳しているが、盗賊団に加担した以上は彼も全くの無実ではない。
否、何もかもわかった上での偽物役だし、レナたちを殺そうとまでした。充分に有罪だ。
「港の麻薬は全て没収されました」と、カイル。
「あなたの供述を元に、その盗賊団を討伐対象に加えてもらいます」
冒険者ギルドで高額の賞金がかけられれば、いずれは強者に退治されよう。
「あなたの罪を償うには、捜索への協力しかありません。心を入れ替えて、ギルドに力を貸すのです。判りましたね?」
聖騎士の圧に負けて、ジャジャは何度も頷いた。
「は、はい!勿論です、すみません、どうか命だけはお助けを!」
「あなたの命も冒険者ギルドに委ねます」と答え、レナは己の剣へ視線を落とす。
「オマエは盗賊団の非道を、どうして止めなかったんだ?」
ジェイドに問われ、ジャジャは再び顔を伏せる。
「……怖かった。儂も消されるんじゃないかと……そう思って、口出しすらできんかった」
公女の誘拐は狂言。斡旋所に提出された依頼書も全くの嘘だ。
彼女も父親と同じ道を辿り、麻薬漬けにされてしまった。
ギルド員が駆けつけてきて偽ラグナル公がお縄頂戴になるのを眺めた後、刹那は仲間に尋ねた。
「これから……どうするの?」
「僕は、しばらくラグナルに留まろうと思います。何かお手伝いできそうな事があればいいんですが」と答えたのはカイルだ。
レナは緩く首を振り、遠くの空へ目をやる。
「私は聖都へ帰ります。残してきた部下が心配ですから」
ジェイドが大きく伸びをして叫ぶ。
「ひとまずはメシだ!それと、うまい酒!うぉぉーっ酒ーっ!」
言うが早いか走り出し、「あ、待って下さいジェイド!僕もつきあいます」とカイルまで駆け足になり、去っていく背中を刹那はレナと見送った。

ようやくラグナル騒動も幕を閉じたのだ。
けして後味が良い、とは言えないのだけれど――


End.