夜の風

Chapter1-6 絶望の断崖


無限に広がる大草原にて、フェイは一匹のギガンスと睨み合う。
獣は巨体をブルブル震わせて此方を威嚇しているが、さきほど撃ち込んだ矢は何本も奴の身体に突き刺さり、確実に弱らせたはずだ。
「フェイ。おい起きろ……フェイッ!」
どこかで誰かが己の名を呼ぶのを聞いた。しかし、今はそれどころじゃない。
あと一歩でギガンスを仕留められる。首都でも見かけなかった大物だ。
「いつまで寝てるんだ、いい加減起きろ」
誰かの呼びかけと同時に獣が襲いかかってきて、鋭いキバで何度も頭を打たれる。
草っぱらで上や下になりながらの大格闘、何度殴っても獣は殴り返してきて、こうなったら奥の手を出すしかない。
「いてて、いてっ、むーっ、このぉ〜、ていこーするならぁっ!」
ガブッ!と勢いよくギガンスの首筋へ噛みついた瞬間、これまで以上の激痛がフェイの頭を襲い、ついでに目も覚めた。
「っつ〜……人の首筋に思いっきり牙立てやがって、何の夢見てたんだ?」
見上げると、首筋をしきりに撫でるヒョウと目があった。
随分至近距離に顔が見えると思ったのも当然で、フェイは彼にダッコされているのであった。
「ちょ、ちょっと、降ろしてよぉ!」
ジタバタ暴れて地面へ降ろしてもらうと、照れ隠し気味に謝った。
「噛みついちゃって、ごっめーん。こーんな、でっかいギガンスと戦う夢を……ネ」
「ギガンス?なんだそりゃ。それよりどうする、これから」
「へ?どうする……って、そーいや、ここ、どこ?」
改めて周囲を見渡すフェイに、ヒョウが頭上を指さす。
「さぁな、現在地点は俺にも分からねぇが……夕べ、お前が寝た後また嵐がやってきてな。そいつに巻き込まれて、ここまで落っこちたってわけだ」
フェイも見上げてみると、空の上、そのまた上で水しぶきがキラリと光った。
あんな高い場所から落ちてきたのかと思うと、ぞっとする。
よく無事だったものだ。
そして、海より低い場所に陸地があるのにも驚いた。
「あっ!イカダは!?俺のイカダァ!」
落ち着きのないフェイと比べたら、ヒョウは比較的冷静だ。
「さぁな。どっかでバラバラになってるんじゃないか」
「えーっ。最高傑作だったのになぁ、アレ!」
「筏の心配より、エリーとエデンの心配でもしてやれよ。二人とも見あたらねぇ。死んじゃいないとは思いたいが……」
二人とも見当たらないってんじゃ、落ち着いている場合でもない。
「死ぬはずないだろ!縁起でもないこというなっ」
「なんで死ぬはずないんだ?」
「だって俺達が生きてたんだもん、あの二人だって死ぬはずないよ!」
楽観的なフェイの答えに併せるかのように、「いやぁぁぁぁっ!」という、とてもよく聞き慣れた悲鳴が届いてきた。
見れば、エリーが此方へ走り寄ってくるところであった。
衣服はやぶれてボロボロ、大方また欲情したエデンに襲われたのであろう。
「ヒョウ、助けて!」と彼の後ろに回り込むエリーを追いかける形で、エデンもやってくる。
「エデンが、あのエロデブが、あたしのことを!」
予想は大正解だ。
筏がバラバラになって墜落する大惨事に遭っても平常運転とは恐れ入る。
「また発情してたのかよ、おっさん」
悪事を窘められてもエデンはモジモジ指をこねくり回しながら、上目遣いにヒョウを見上げた。
「発情とはひどいのぅ。目を覚まさないようじゃから、人工呼吸を施してやっただけじゃ。くちと、くちをこう……むちゅっと併せて、儂の息を吹き込んで、な。むふ」
「その後、胸も揉んだだろッ!」といった苦情にも「苦しそうに水を吐いているから、その、な?苦しみを和らげてやろーと思って」と反省の色がない。
ポツリとフェイが呟く。
「……なーんか俺、放り出された先がヒョウと同じでよかったー」
「あーっ、あたしもヒョウと同じ場所に放り出されたかったー!」
フェイの振ってきた雑談にエリーまで乗っかって、「ひどいのぉお前ら本当にひどいのぉ」といじけるエデンへ一人雑談に混ざらなかったヒョウが問う。
「なぁ、エデン。ここが絶望の断崖なのか?」
「恐らくな。一度谷底まで落ちたら、二度と這い上がれない……絶望じゃよ」
「ここから更に落っこっちゃったら、今度はどーなるの?」とは、フェイの疑問に。
「さぁのぅ……行く先は地獄か、はたまた魔界か……落っこちたことがないから判らんよ」
大真面目に答えるエデンへエリーが突っ込む。
「今は落ちる心配をするより、上がる計画を立てる方が先だろ?」
「だな。だが、どうやって登る?」
もう一度全員で頭上を眺めたが、上へ登る足がかりすら見つけられない。
断崖絶壁。その名に違わぬ垂直さだ。
「この高さでは、空でも飛ばんことには登れんのぉ……フェイよ、良い考えはないもんかの」
「うーん……この辺ってさ、木がいっぱい生えてるんだよねぇ。ツタを使ってロープ、作れないかな?」
せっかくのアイディアも「作るはいいとして、誰が上に引っかけるんだ?」というヒョウのツッコミで没になり、一行は再び腕組みで考え込む。
だが、どれだけ考えたって何のヒントもないんじゃ思いつきそうにない。
「ちょっと、どこ行くんだい?」とエリーに呼び止められて、歩きかけていたフェイが振り向く。
「色々歩き回ってみる!そんでイイ物見つけたら、それ使う!」
「ガキらしい発想だが、確かにココで考えたってラチがあかねぇ……行こうぜ」
ガキらしい発想で悪かったなぁ!とフェイは言い返そうとして、やめた。
言い争うよりは歩き回って、少しでも上にあがれそうな情報ないし場所を探すのが先だ。
そう考えて、あちこち歩き回ること数時間。
早くもエリーの足はガクガクに疲労を訴え、フェイも息があがってくる。
「辛そうじゃのぅ、お嬢ちゃん。儂がダッコしてやろうか?」
差し出されたエデンの手を振り払い、エリーが後ずさる。
「じょ、冗談!あんたなんかに抱きかかえられるぐらいだったら、水に飛び込んで流された方がマシだよッ」
「そこまで嫌わんでもえぇのにー」
ぶぅたれるエデンとエリーを両方見比べて、フェイが汗だくの顔で微笑む。
「もうちょっとだけ探したら、少し休む?」
「あたしに気遣いは無用だよ、フェイ。さ、がんばろ」
「……うん。でも辛くなったら言ってね。っとと」
方向を変えた瞬間、よろけて体勢を立て直す。
足が限界なのはエリーだけじゃない、フェイもだ。
「お前こそ大丈夫か?」とヒョウに気遣われて、フェイは「平気平気!ちょっと足がクタクタだけど、まだいけるって」と元気なフリを装ったのだが、ひょいと抱きかかえ上げられて「うわぁっ!?」と悲鳴をあげるハメになった。
「ちょっと、ちょっとぉ!やだ!やめろよおろせよ恥ずかしいだろ!?」
どれだけ嫌がっても、今度は降ろしてもらえそうにない。
「わぁわぁ騒いでんじゃねぇ。いいから静かにしてろ」
本人の意思を無視したヒョウは、疲れが全く伺えない。
休みを挟まず歩き回っているというのに、少年一人を抱きかかえて歩ける耐久力に、エデンは感心する。
自分は島暮らしで培った体力と腕力がある。ヒョウは細身に見えて、意外やタフネスだ。
抱きかかえられた当人はエデンほどの観察力もなければ、穏やかな気分でもいられず、なおもギャーギャー喚き立てた。
「恥ずかしいもんは恥ずかしーんだ!俺よりエリーを、だっこしてあげろよ!」
「ば、馬鹿っ!何言い出すんだい、この子は!!あたしは大丈夫だっつってんだろ!?」
思わぬ流れ弾にエリーの声まで甲高くなるのへは、ヒョウがストップをかける。
「お前が倒れたら、この旅は終わりなんだ。少しでも体力温存して貰わなきゃ、こっちも困るんでね」
「でも、でも、だからってダッコはないだろダッコは!うぇぇ〜〜ん、恥ずかし〜よぉ〜」
ヒョウの言い分には一理あるし、抱きかかえてもらえるんだったらエデンだってそうして欲しいぐらいだが、フェイにはフェイのプライドがあるのだろう。
本気で泣き出した少年を眺め、エデンは助言してやった。
「フェイは男の子だからのぉ。ダッコはやめてオンブはどうかの」
「あ、それならオッケ」と本人も腕の中で丸サインを出してきて、ヒョウを呆れさせた。
「何なんだ、お前は」
「っていうか元気いっぱいじゃないか、フェイ」とエリーも突っ込み、フェイを促す。
「その元気があるなら、自分で歩き回れるんじゃないかい?」
フェイは「へへ、その通り!」と答えるや否や、ひょいっとヒョウの腕から飛び降り抜けた。
「余計な気、回さなくていいよ。これは俺の冒険なんだから、自分で駄目だと思ったらその時、皆に伝えるよ」
「うむうむ、子供は元気、元気こそが冒険の源じゃ」
締めに入るエデンを遮る勢いで、エリーが叫ぶ。
「あっ!見てごらんよ、あっちの方!あからさまに岩肌と違う面が見えるよ」
言うが早いか走り出した彼女を追いかけて、「えっ、どこどこ!?」とフェイ、それからエデンとヒョウも走り出す。
エリーの目指す場所めがけて一直線に。

近づくにつれ、奇妙な壁が見えてくる。
両脇に岩が高く聳え、その間に鋼鉄の扉が挟まっていた。
「なんだこりゃ……あからさまに怪しいな」と呟くヒョウにつられて、エデンも扉の向こうを覗く真似をしてみる。
扉は隙間なく閉まっており、反対側を覗こうにも覗けなかったのだが。
「この扉の先は何があるんじゃろうなぁ」
「開けてみればわかるよ」
フェイは扉に手をかけてみるが、押しても引いてもビクともしない。
「この手の扉には、なんらかの謎かけがあるもんじゃが」と、エデン。
「謎かけ?」と首を傾げたエリーへも、扉を見つめたまま答えた。
「そうじゃ。扉に封じ込められた魂が、儂らに質問を投げかけてくるんじゃよ」
「それが謎かけかー、へぇー面白そう!やい扉っ!謎かけしてこいよ!」
フェイが叫んで数分待つこと、扉は、やはり無反応。
「エデン〜、本当に謎かけなんてしてくるもんなの?扉がー」
焦れて文句を言うフェイにも聴こえるよう、これ見よがしにヒョウが呟いた。
「普通はどっかに鍵が落ちてないか、調べるのが先だと思うんだがな」
「はぅっ」となるフェイを気遣って、エリーが「そんな厭味ったらしく言わなくたっていいだろ!?」とヒョウに怒鳴っても、ヒョウは近くの岩肌を調べるので忙しい。
エデンも片っ端から、そのへんにある岩や石をひっくり返してみる。
四人がかりで探しても、鍵になりそうな物は見つからなかった。
「ふむぅ……どこにも、それっぽいものは落ちてないのぅ。やっぱり謎かけ説が有効じゃのーこうなってくると」
「扉が話すっていうのか?エデン、正気か」と頭の中身を疑ってくる異星人には、エデンも些かムッとなる。
「お前さんは空の民だから知らんのじゃろうが、物には昔から魂が込められておるとされとるんじゃ」
だが「昔話はいいよ、今は先に進む方法を考えなきゃ駄目だろ」などと、同じホワイトアイルの住民であるはずのエリーにまで駄目出しをされて、エデンがカッとなって何かを言いかけた時。

「・・・・・・・・・・・・・愛・・・・・・・・・・・・・・」

低い声が、どこからか聞こえてきた。
「……えっ?ヒョウ、なんか言った?」
「いや、なにも」

「・・・・・・・・・・・・・・愛を・・・・・・・・・・・・・・・」

再び同じ声が二人の会話を遮って、エリーもあちこちを見渡す。
「うわっ!?な、なんだい今の声、どっから!?」

「・・・・・・・・・・・・・・・愛の、力を・・・・・・・・・・・・・我に」

「扉じゃ!扉がしゃべっておるぞい!」と叫んだのはエデンで、泡くう彼の指が示す先に全員が注目した。
目の前にあるのは鋼鉄の扉。それしかない。
「……嘘だろ?」
半信半疑でヒョウが、そしてフェイやエリーも見守る中、今度こそ扉の方向から先ほどと同じ低い声が聴こえた。

「・・・・・・・愛の力を・・・・我に見せてみよ・・・・・・・・愛を・・・・・・」

「さっきっから何だい、愛、愛って。背中が痒くなるような質問投げてよこすねぇ」
ぶつくさ文句を垂れるエリーを見上げて、フェイが言う。
「愛の力ったって、どうやって見せればいいわけ?エリー、お手本見せてよ」
「え!な、なんであたしが!?」
狼狽える彼女にも、純粋な瞳を向けてフェイは笑った。
「エリーなら知ってそうだと思って……女の人って、そういうの好きだよね?」
さっそく「見せてやろうかの、エリー。儂とお前さんで愛の力を!」等と寝言を宣いながらエデンが近寄ってくるのは両手で押しのけて、エリーの額に青筋が浮かぶ。
「そーくると思ったよ!このエロ樽、あっちで魚とでもハァハァしてなッ」
「何にしても抽象的すぎる謎掛けだぜ。ま、何も親切に謎かけに答えてやる義務もないが……」と呟くヒョウには「え〜?でもせっかく質問してくれてるんだから、やっぱ答えなきゃ!」とフェイも持論を曲げず、では誰がどうやって扉に愛を示そうか。
「魚は駄目じゃ。びちびち跳ねるし生臭いでのぅ。エリー、魚よりもお前さんの暖かい乳で」
「寄るな触るな近づくな!人肌が恋しいなら、フェイだっているだろ?」
「何を言うとる、儂は少年よりも美女が大好きじゃて」
ギャンギャンやり合う二人をほっぽって、フェイとヒョウは扉を眺める。
謎掛けの答えは、扉の前で愛情を示す。これで間違いない。
「この扉の向こうにいる奴は、どんな愛を見たがってんだろうな」と首を傾げるヒョウへ、フェイも「さぁ。だいたい、愛ってナニ?」と腕を組む。
何度目かのやり取りでエデンを力いっぱい押しのけたエリーも、フェイたちの会話へ混ざってくる。
「そりゃ愛って言ったら親子の愛とか、兄弟の愛とか、いろいろあるじゃないのさ」
しばし無言になった後、フェイは俯きがちに呟いた。
「そんなの知らないもん」
「あっ……そっか、ごめんよ。あんた孤児だったんだっけね」
謝るエリーへ突っ込んだのは、度重なる塩対応にもめげず起き上がったエデンで。
「お前さんとて、そうじゃろ?エリー、お前さんは親子愛を知っとるのかね」
「そりゃあ、あたし自身は受けたことないさ。でも、受けてる奴を見ることはあった、街でしょっちゅうね。ああ、あいつ、親に可愛がられてんだな、愛されてんだなーって」
彼女の語り口を遮るように、またも扉が言葉を放つ。

「・・・・・・・・・・・愛の・・・・・・・・」

「わぁ!きゅ、急にしゃべるんじゃないよ、ビックリするじゃないかっ」
「心臓に悪い扉じゃのー」
外野の文句など聞く耳も持たないのか、扉は語り続けた。

「・・・・絆を、我に・・・・見せてみよ・・・・・我の・・・・・しもべを・・・・・・・・愛の力で・・・・うち破ってみせよ」

「あ、扉が開く!」「いや、違うっ!」
フェイとエデンの声が重なり、扉の隙間から、さぁっと飛び出してきた大きな影に全員が驚愕する。
目の前で吠え猛るのは、身の丈を遥かに越える巨大な怪物――としか例えようのない生き物だ。
これほどまでに異様な大きさの動物は、首都でも辺境の地でも月明かりの島でも見かけた覚えがない。
硬い表面を見せる肌には無数の棘が尖っていたし、クチは大きく割れて鋭い牙を見せている。
ぶるんぶるんと振り回される尻尾は、ごうごうと赤く燃えている。
そんなやつが、丸太の如きぶっとい四つ足で踏ん張って、此方へ向けて威嚇の咆哮をあげてきたのだ……!
「なんだこいつぁ。エリー、判るか?」
ヒョウに尋ねられて、エリーが咄嗟に「知るわけないだろ、こんなバケモノッ」と返した直後、エデンも叫ぶ。
「こりゃあ……ゲートバングルか!」
「知ってるの?!エデンッ」と尋ねるフェイに、確信を持って頷いた。
「うむ、ミディアから話は聞いとった。世界のどこかに、こと始めを語る場所があり」
解説途中で怪物が『グアアァァウッ!』と吠えて、飛びかかってくる。
棒立ちのエデンを助けたのは、「バカッ、危ない!」と横っ飛びに抱きかかえて地面を一緒に転がったエリーだった。
「儂を助けるとは、これが愛じゃな、愛。エリーの愛が儂を救ってくれたのじゃよ」
「黙れ。あと、さっさと離しな!いつまでも、べったり抱きついてんじゃないよッ」
ドンと邪険に突き飛ばされて尻餅ついたエデンを見もせずに、ヒョウが戦闘態勢に入る。
「わっ、また」と驚くフェイにはエリーが尋ねた。
「何がまた、なのさ?」
「あのねぇ、ヒョウっていっつも、どっからかナイフを取り出すんだよ。さっきまで持ってもなかったのに、不思議ー」
「暢気にしゃべってる場合じゃないだろ」とは本人の牽制に、改めて一同の視線が怪物に集中する。
ヒュッと風を切って投げられたナイフは、カチンと硬い音を立てて弾かれた。
「やっぱ駄目か。ナイフぐらいじゃ倒せねぇな……お前ら、他に策はあるか」
そう言われても、ヒョウ以外は誰も武器になりそうなものを持っていない。
「愛の力じゃないと倒せないのかな?ねぇエリー、エデンと愛の力でやっつけちゃってよ」
「だから何であたしとコイツなの!フェイだって、そのッ、あたし達が好きなら愛の力ぐらい」
言い合いしている間にも、怪物がエリーめがけて突っ込んでくる。
「きゃあぁぁぁっ!」
悲鳴をあげるも全く動けない彼女を助けようと、エデンも走り出し、途中で「あうっ」と勢いよくすっ転ぶ。
牙が爪が、エリーの柔らかな肌を引きちぎろうかという寸前。
「エリー、危ないっ!」
ドンッ!と力強く突き倒されて、エリーは地面を転がった。
転んだついでに顔を擦りむいたが、それどころじゃない。
「フェイッ!!」
ヒョウの悲痛な叫びが示す方向には、血を流して横たわる小さな身体――フェイの姿があった。


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